旅行日程の中盤に、サメダン(エンガディン地方)からツェルマットへの長距離移動があった。列車を3回も乗換え、列車移動時間だけで延8時間以上を要し、しかも、ツェルマット到着後、マッターホルン直下にあるホテル(シュワルツゼー)行きのロープウェーは、16:00発が最終便。これに乗り遅れたら、路頭に迷う。
この列車移動の中間地点あたりのアンデルマットで途中下車し、ハイキングで、世界遺産「悪魔の橋」を見ようという計画。したがって、サメダンを早朝4:59発の列車に乗るという、非常にタイトで厳しい日程である。悪魔の橋見学には、それだけの思い入れがあった。
「悪魔の橋」伝説とは、麓のウーリの住人たちが、悪魔に「峡谷に橋を3日間で架けるから、最初に渡った人の魂をもらう」と約束させられた。橋ができあがったので、困り切った住人は、人間の代わりに山羊を渡らせた。約束違反に怒った悪魔が、大きな岩を橋に叩きつけようとしたが、一人の老婆が岩に向かって十字を切ると、悪魔は急に力を失って姿を消したというもの。